2023年12月【留学レポート】済州大学校 法学部政策科学科 T.T
2024年01月23日
4ヶ月の留学が終わりました。
これまでのレポートでは、留学に対して前向きな学生や保護者の方々に向けて、済州大学や韓国での生活を綴ってきました。
12月が最後のレポートになりますが、今回は留学に対して消極的な保護者の方々に向けて書きたいと思います。
このレポートを読んでいただいた後に、留学に対する考え方が少しでも変わったら嬉しいです。
私は韓国に4ヶ月留学してみて、自分のここが変わったなと思うところが大きく二つあります。また、その二つの変化に留学の本質や醍醐味があるのではないかと考えます。
一つ目の変化は、なんとなく自信がついたことです。
果たしてこの自信が何に対して使えるのかは分かりませんが、留学前よりも人前で話すことに苦を感じなかったり、今ならちょっと目上の人にもイラッときたら普通に反論できたりするような気がします。
確かに、数値で測れる部分でも成長したとは思います。私は、済州大学では韓国語を勉強していましたが、英語力向上のために他の授業は英語で受けており、普段のコミュニケーションも英語を主としていました。英語はリスニングもスピーキングも向上したと実感しますし、韓国語も全くできなかったことを考えると進歩を感じます。
そのため、TOEICやTOPIKなどの言語試験を受けて数値化したら、それなりの4ヶ月の成果が表れると思います。
ただ、そういった数字には表れないような、でも言語化するのは難しい「なんとなくの自信」がついたことが、自分にとって一番大きな成果だったと思います。
なんとなくの自信が得られた要因についてもう少し深堀すると、言語も文化も違う国で4ヶ月生活したという事実が、自分を少し強くしてくれたのかなと考えます。
また、その留学生活の中では、50人の韓国人学生の前で戦前の日韓併合や現代の日韓関係について自分の意見を述べるプレゼンも経験しました。4ヶ月間ずっと男1女9のクラスで韓国語を勉強したり、留学生と性に対する考え方で意見がぶつかったりもしました。
そんな今までとは異なる環境で、これまで直面したことのない負荷のある経験の積み重ねが、私になんとなくの自信をくれたように思います。
もう一つの変化は、なんとなく世界の見え方が変わったように感じることです。
留学期間中にはたくさんの人に出会い、且つたくさんのことを学びました。韓国に留学しましたが、済州大学には多くの国から様々な学生が来ていました。
プーチン大統領の動画を見せると耳を塞いで逃げるロシア人、ピザ屋でオニオンリングしか食べられないヴィーガンのカナダ人、ワイン大好きフランス人、6ヶ国語ぐらい話すデンマーク人、毎日絶対に遅刻するベトナム人、いつも少しだけご飯を残すモンゴル人、すごく友達想いな中国人、やっぱり辛いものを食べる韓国人などなど。
ここに挙げた友達はほんの一部ですが、こういう人たちの姿を目の当たりにするとやっぱり価値観や考え方に違いを感じます。
もちろん日本人同士でも価値観の違いはあります。しかし、全く異なる環境で育った海外の友達と日本人としての自分を比較すると、物事に対する考え方、見方など、良し悪しは無くても、違いがあると肌で感じます。
授業では韓国の歴史だけでなく宗教や美容整形、児童教育など現代の韓国社会で見られる問題も勉強しました。またそれを国や宗教が異なる学生と一緒に受けたり、韓国の視点で俯瞰的に日本の歴史について考えたり、普段とは異なる観点で物事を捉えられたことで新たな気づきも得られました。
「この事象においては韓国ではこう考えられているんだ」や「この国の人はこういう考え方をしているんだ」などの経験が、偏見だらけだった私の世界に対する見方をなんとなく変えてくれたように感じます。
なんとなくの自信やなんとなく変わった世界の見方が、自分のこれからの生活にどう影響するかは分かりません。それでも、私はこの良く分からない抽象的な成果を得られたことに大きな価値を感じていて、この経験が生涯を通して自分の生き方に影響してくれるのではないかと思います。
確かに、保護者の方々からすると、大きなお金を出して長い期間留学をさせて、その間は大きな不安や心配に駆られながら生活することを考えると、何かもっと具体的で定量的な成果をあげてほしいと思うかもしれません。
もちろん実際には語学能力をあげたり、あるいは職に繋がるような専門的で実用的な知識や能力を身につけたりすることもできますし、留学を通してそのような力を身につけることは素晴らしいことだと思います。
でも、能力や知識とか具体的なものを得るための過程で経験する歯が折れるくらいの悔しさだったり、目が涙で溺れるくらいの感動だったり、頭の上に電球が出現するくらいの納得感だったり、その時々で感じられる格別な何かが、一番尊いものだと私は思います。
こんな大袈裟なことを言いながら、大阪よりも近い200キロしか離れていない島に留学した私ですが、そこが日本ではない限り、場所を問わず得られるものがあると思います。
私を含めて、多くの大学生は子供を持ったことがなく、両親の子どもへの心配の度量は計り知れない、想像しにくいものだと思います。その上で、我が子を得体の知れない国に送り出すというのは、大きな怖さを伴うはずです。だからこそ、私は留学という選択肢を持たせてくれて、こんなに素晴らしい経験をさせてくれた両親には感謝しかないです。
留学では様々なことに触れます。そして、色々な感情になります。喜んだり、怒ったり、哀しんだり、楽しんだりします。きっと子どもは、留学中や留学後は、その国で得た思い出を目を輝かせながら話してくれると思いますし、ときには泣きながら電話してくることもあるでしょう。そんな無邪気な様子は、まるで可愛かった幼少期と重なる部分があるかもしれません。
この世にサンタがいないことを知ってから我が子の大人になるまでのスピードはとても早かったでしょう。年々ひげが濃くなっていく息子、年々化粧が濃くなっていく娘。良くも悪くも年々順調に大人びていく中で、幼かったときの可愛さは徐々に見られなくなってきたと思います。
そう考えると留学中の我が子の姿は、幼かったときの可愛い我が子が見られる最後のチャンスかもしれません。
留学は本当に素晴らしいものでした。留学を望むお子さんがいらっしゃる保護者の方々には、早々に留学という選択肢を消さずに、一度向き合っていただきたいなと思います。
最後に一つ言及させていただきたいのは、お金の問題です。
たとえいくら留学したくても、させたくても、金銭的な問題は避けては通れないと思います。
そこで少しお金の話をすると、私は大学の交換留学だったため、留学先に新たに学費を払う必要はありませんでした。また、日本学生支援機構から海外留学向けの給付型奨学金を月7万円受け取っていました。これは、貸与ではないため返す必要はありません。また、韓国にも海外留学生向けの奨学金制度があります。
このように、留学を望む学生のための奨学金制度はいくつか存在しますので、一度調べていただけたらと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
このレポートが、留学はしたいけど留学に対して否定的な両親を持つ学生の力になれば嬉しいです。